あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。
父と私はドーバーから出発し、大西洋を南東に向けて航海していた。朝の海は穏やかで、いつものように静かに私たちを包んでいた。
太陽が頭上からやや西に傾き始めたあたりから、天候が急変し、大きな雷鳴とともに嵐が襲った。日中の天候が嘘の様に、波が荒れ狂い、もの凄い強風が船を揺らし続けた。その激しい揺れと風圧によって船には負担がかかり、いつ転覆してもおかしくない状況が続いた。
その時、父の叫び声が響いた。「操舵が破壊された、完全に操縦不能だ。」すでに甲板には浸水が始まり、マストは折れかかっていた。その直後、激しいウネリと大波が襲いかかり、私たちの船は転覆してしまった。辛うじて救命手漕ぎボートに飛び乗ったのは私だけだった。
振り返ると、海の底に沈む船の渦に巻き込まれている父を見つけた。私は必死に父を救おうとしたが、どうすることもできず、父は船の残骸と共に海底に消えて行ってしまった。
その時の絶望と無念は、今でも私の心に深く刻まれている。そのまま何日漂流したであろう・・・やっとの思いで生き延びた私は、偶然通りかかったアメリカの船によって救助された。
しかし、父の喪失という痛みは消えず、なんとも言えない罪悪感が心を覆い尽くしていた。屈強で誰よりも強かった父親が、あんな簡単に命を落としてしまったことが信じられなかった。
私は父の死を背負いながらも、彼から受け継いだ宝の地図と冒険への想いを心に刻み、再び船に乗り込む決意をした。
父の精神と教えが新たな航海へと導いてくれる、彼の記憶を尊び、彼の影響を感じながら私の冒険者としての旅は続いていくだろう。